耐震診断・耐震補強とは?

日本は、世界から見ても地震が多く発生する地域であり、阪神・淡路大震災(1995年)、新潟県中越沖地震(2007年)、岩手・宮城内陸地震(2008年)、東日本大震災(2011年)等と記憶にあるような地震だけでもこれだけの数に上ります。

各地の地震被害の様子

そもそも、地震とはプレートの運動により発生するものです。
プレートの境界部分では先端部にひずみが生じます。ひずみは次第に蓄積し、ついに限界に達したとき、プレートの先端部が動きます。この衝撃が地震となります。
日本列島付近では、右図のように、4つの異なるプレートが接しています。プレートの境目に位置している日本は、地震多発国の宿命を負っているといえます。

ここ鹿児島に影響を及ぼす地震には、「主に陸域や沿岸部の浅い場所で発生する地震」と、「日向灘や種子島、奄美大島の東方沖の海域での地震」と、「南海トラフ沿いの巨大地震」のようなものがあります。
鹿児島においても、安全で安心できる暮らしを送るためには、常日頃からの地震への対策をすることが必要不可欠であるといえます。

その対策こそがまさに「耐震診断」、「耐震補強」なのです。

「耐震診断」、「耐震補強」、普段なかなか聞きなれない言葉かと思います。
分かりやすく説明するために、この言葉を人間に置き換えてみると、「耐震診断」とは人間でいうところの健康診断にあたります。
健康診断をし、体調に問題がないようであれば、通常の生活に戻っていくことができますが、もし異常があった場合には手術が必要になります。
健康診断が「耐震診断」であれば、この手術が「耐震補強」といえます。
建物の悪い部分を「耐震診断」で判別し、悪い部分があれば、その部分を「耐震補強」で改善し、強化していくことになります。

ですが、通常は建物を建てる際、そういった部分は確認をされているのではないかとお思いの方も多いと思いますので、次は、なぜ「耐震診断」や「耐震補強」が必要とされているかについてお話をしていきます。

耐震診断・耐震補強の必要性

なぜ今「耐震診断」や「耐震補強」ということが言われているのでしょうか。
日本のすべての建築物は、耐震基準を満たす形でつくられていて当然なのですが、耐震基準が始めに定められたのは、1923年の関東大震災の翌年です。

しかし、それ以降も日本においては多くの地震が発生しており、その度に今まで知見されていなかったような事象が発生し、当時の耐震基準ではすべての事象に対応できていないことが判明していきました。

構造基準の改正の契機となった大地震をいくつか列挙するだけでも右図のようになります。

このような様々な地震の影響を受け、耐震基準が新しい基準に改定されたのが1981年で、それを今までの耐震基準と区別して、新耐震基準と呼ぶことになりました。

つまり、この新耐震基準への改定前に建築された建物は、地震に対する強度が低く、危険性をはらんでいる可能性があると言えます。

そのため、最新の新耐震基準以前 (1981年以前) の既存建物は、この新しい基準で耐震性を再評価する必要があります。

関東大震災(1923年) → 世界初の耐震基準(1924年)
福井地震(1948年) → 建築基準法の制定(1950年)
新潟地震(1964年) → 液状化
十勝沖地震(1968年) → RC造せん断補強の強化
大分県中部地震(1975年) → ピロティ階の認識
宮城県沖地震(1978年) → 新耐震基準
兵庫県南部地震(1995年) → 限界耐力計算

厳密には、1981年以降でも2007年6月20日以前の建物についても、増改築する時には、耐震診断が必要となる場合があります。 以前の基準を満たしていたからといって、決して安全であるといえないのが、日本の建築物ですので、「耐震診断」、必要であれば「耐震補強」を行っていくということは安全・安心でいるためには必要不可欠なことなのです。

続いては、実際に耐震診断とはどのような流れで行っていくを見ていきます。

耐震診断・耐震補強の流れ

耐震診断・耐震補強の業務の全体像は下図のとおりとなります。
自社の保有する建物の耐震性が気になりましたら、まず「お問合わせ」いただき、その後「無料での相談」をさせていただきます。
その相談内容を経て、「予備調査」を行い、耐震診断が必要であると結果が出ると、「耐震診断」をすることになります。
「耐震診断」の結果、耐震性が低く、補強が必要であると判断された場合、「耐震補強」を行うか「建て替える」 かを決定します。
「補強の工事」が始まっても、設計者として工事全体を監理し、工事完了後も「アフターフォロー」をさせていただきます。

耐震診断・耐震補強の依頼先

「耐震診断」という業務は、ゼネコン、工務店、ハウスメーカー、リフォーム会社など実に多くの企業が行っています。
もちろんその中には、われわれ設計事務所も入っております。

しかし、他の業種の企業と設計事務所の大きな違いは、その目的にあると考えられます。
「耐震診断・耐震補強」というものは、「耐震診断」を行い、その結果、建築物に脆弱性が見受けられた場合に改修を行います。
そして、その改修の内容は、「耐震補強設計」を行い、実際の「施工」を行うという流れになります。
設計事務所は、上記の中の「耐震診断」、「耐震補強設計」とその後の施工の「監理」を行いますが、他の企業は、どちらかというと、「施工」部分が業務のメインといえます。

なぜなら、 「施工」の部分が最も金額が高い部分だからです。
「施工」の業務を取りに行くために、「耐震診断」を行っているという会社も多いかと思います。
ですが、この「設計」と「施工」を同一会社が行うことは、大きなデメリットもはらんでいます。

それは、 全体の「設計」を行い、工事を「監理」するべき人と実際の「施工」を行う人が同じ会社であるため、その内容に透明性が失われます
例えば、補強部分で大きな利益を出すための「過剰設計」もこの「設計、施工」が一体化していることの弊害のひとつです。
それに比べ、設計事務所は、「耐震診断」、「補強設計」、「施工時の監理(チェック)」がメインの業務といえるので、「設計・施工」が一体化してしまうことによる弊害は生まれにくいといえます。

耐震診断・耐震補強の実績

こちらの項目では、当事務所がこれまでに手がけてきた耐震診断・耐震補強の実績をご紹介いたします。
様々な規模、用途(医療教育施設、福祉施設、マンション、商業施設、住宅)の案件を数多くこなしており、ど のような建物の耐震診断・耐震補強でも対応できる自信がございます。

物件名FLEX01谷山
構造鉄骨造
面積634m²
請負業務耐震診断/耐震補強/コンバージョン
請負金額¥38,000,000
完了年2008年
コメント
当物件は、これまで学生寮だったものを女性をターゲットとした賃貸マンションにコンバージョン(用途変更)して事業化に成功した事例です。
新築として建て直すのではなく、建物の基礎となる躯体部分に耐震補強を施し、建て直しをしているため、新築の建築工事費の50~70%程度の費用でコストを抑えられています。
また、新築同様の収益をあげることができる物件に生まれ変わったため、投下資金回収も早期に行うことができた実績です。

耐震補強の費用

耐震診断・耐震補強の流れのページで説明をしてありますが、まずは、図面の内容を確認するような予備調査を行います。
弊社の場合、ここまでは費用を受け取らず、「無料簡易耐震診断」としてお受けしております。
この次に行う建物の現地調査、計算を行う業務が耐震診断であります。
診断の費用は、建築物の大きさ・形状・構造、診断の程度、設計図書の有無、現地調査の有無により異なりますが、一次診断であれば、50万円〜200万円程度であることが多いです。
二次診断であれば延べ面積に対して、1,000円/m²から2,000円/m²程度です。(RC造、鉄骨造、コア抜きはつり費用等も含む)

詳しい金額に関しては、耐震診断・耐震補強の実績の項目でも掲載しておりますので、ご覧下さい。

ご覧いただくと分かるとは思うのですが、耐震診断にかかる費用は決して安い額ではありません。
また、建物は形状や構造などが異なり、それによって工事が必要かどうか、適している工法が何なのかも異なります。

そこで、プレーリーでは「そもそも工事が必要なのか」ということや「単なる耐震診断、耐震補強ということに止まらず、その建築物を有効に活かしていくためのコンバージョン(用途変更)のアイデア」などに関しての相談もお受けしています。

まずは、いきなり「耐震診断」を依頼するということではなく、「簡易耐震診断」(無料相談)にお申し込みいただくことをお勧め致します。

簡易耐震診断(無料相談)

プレーリーでは、本格的な「耐震診断」を行う前に「簡易耐震診断」を受けることをお勧めしております。
簡易耐震診断とは、「建物のプロによる図面と建築物の簡易的な目視調査」及び「耐震性に関する不安をお 伺いするヒアリング」です。

特に以下のようなことが該当するような建物をご所有の方は、お早めにご連絡下さい。

  • 1981年(昭和56年)以前に建てられた建物である
  • 壁にひびが入っているのが分かる
  • 1階部分が駐車場になっており、柱だらけの構造である
  • 増改築を行ったことがある
  • 建物が傾いている
  • 過去災害にあったことがある(浸水、火災など)

いきなり高額な「耐震診断」をしなくても、まずは簡易耐震診断を利用していただくことにより、

  • 耐震診断をすべきかどうかの判断がつく
  • その建築物を今後どのように運営していくべきかのアドバイスが受けられる

というメリットがあります。

例えば、今までプレーリーにご相談いただいたお客様の中には、建物の耐震性を高めるとともに、その用途を 「学生寮」から「賃貸マンション」に変更し、収益性を高めたような事例も存在します。

まずは、お気軽にご相談下さい。